読み書きLD(X投稿)まとめ
読み書きLDのゴールに関する考え方
私は読み書きLDのゴールは「読み書き」自体の改善は手段であり、一定の語彙知識を身に着けて、学びの姿勢を失わず、情報の分断と階層を超えて、挑戦し続ける生き方を獲得する事だと考えてます。 その大局の目的を達成する為に、部分(機能面)のサポートをしています。
ディスレクシア症状のコア(その1)
ディスレクシアのコアとなる部分は『易疲労性』。読みの負担から、文字から離れて、語彙が身に付かずに、勉強が苦手になる。勉強嫌いから学ぶ事自体も嫌になる。 ICTによる代替にしても、トレーニングによる読みの改善にしても、易疲労の負担を減らす事に焦点を当てると良いと考えてます。
ディスレクシアが『見え方』の問題という誤解が分かりやすさ故に広がりやすい事を考えると、この『疲労の側面』を強調して、読みの問題を伝える啓蒙の方法が有効だと考えてます。疲労の問題から、何故?と読みの機能的な問題や原因へと関心を掘り下げていけますよね。
ディスレクシア症状のコア(その2)
読み書きLDの相談を受けていて、中心を占めると感じる問題です。もちろん、個々人異なり、他にもありますが、以下「スラスラ読みにくい」「読むと疲れる」「手で書いても覚えられない」「文字を覚えても忘れる」「英語学習が著しく苦手」が、本当に多いです。共通点は勉強の「負担」として現れます
読み書きLDの本質
読み書きの苦手さを「病理」として定義のみで理解すると、本質を見誤ります。人が文字を持ち始めたのは、5500年前、人類の長い歴史からすると、つい最近です。文字の読み書きは一部の人の特別な行為でした。だから、文字の読み書きの実現は、様々な機能を組み合わせて、少し無理な脳の使い方をしています。当然ですが、読み書きが苦手な脳の個性の人もいます。特別な事ではありません。
ディスレクシア、ディスグラフィア
ディスレクシアとディスグラフィアは、状態に応じて使い分けられている側面があり、インフルやコロナのような生物学的な境界線があるわけではありません。読み困難も伴う書き問題と、さほど伴わない書きの問題に分かれます。書き困難のみでも、調べると読み問題を抱えているケースは多いです。
読み書きLDの指導について
日本では運筆とビジョンが主流になっているけれど、純粋に手先の不器用さのみが影響している場合を除くと、まずは、読み書きLDへの介入は「字形(文字の形)記憶」と「デコーディング(文字⇔音との結びつき)」の2つに主眼を置くべきだと思う。この2つが全く影響しないケースは少ないので
こう書くと分かりやすいかもしれません. ①文字の形が具体的に頭に思い浮かばない ②文字を見ても頭の中で音が鳴らない。 ③文字列が一纏めの単語として認識できない。 上記で躓いている子が多いです。この3つを全てスルーすると、本質的な解決にはならないでしょう。
①の文字の形のイメージ自体が弱いと、いくら手で書いても、補強すべきイメージ自体が弱いので、砂の上に塔を建てるような事になります。②が弱いと、1文字ずつ確かめないと文字が拾い上げられず(逐次読み)、さらに頭の中の語彙と文字列が繋がらず、③の単語形態記憶の形成に影響を及ぼします。
読みの自動化
文字を見て、頭の中で音が鳴ると、頭の中の語彙と、文字列が結びついて、文字列を単語形態として認識できるようになります。これが「読みの自動化」に影響します。「オオサンショウウオ」という長い文字列を見て、すぐに、黒く大きな生き物(意味)が分かるのは、単語形態記憶に照合できるからです。
逆に言うと、文字を見ても頭の中で音が鳴りにくいと、1文字ずつ確かめて読む必要があるので「逐次読み」が残ります。文字と音の結びつきを強めて、高心像かつ少ないモーラ数の単語から、段階的に単語形態記憶を形成することで、読みの自動化は促されます。
読み書きLDと英語学習
読み書きLDのお子さんでは、英単語を覚える事が漢字以上に苦手な場合が多いです。理由は、日本語は文字を並べると単語の読みになりますが、英語は単語ごと文字と音との対応関係が複雑だからです。頭の中で音と文字列の対応を処理する負担が大きい事が背景としてあげられます。
指導法として、英語の読み方のパターン(スペル×音)を、体系的に学ぶフォニックスがあげられます。英語圏などでは、マルチセンソリー(多感覚)でフォニックスを学ぶ指導法が多く選択されています。日本語と英語の性質差は大きいので、読み書きLD以外の方でも、フォニックスはお勧めです。
英単語の「スペル⇔音」のパターンが頭の中に入っていると、読む時はスペル⇒音の記憶に照合できますし、書く時は、音⇒スペルの組み合わせパターンとして思い出しやすくなります。全体的に読み書きの負担が軽減します。
読み書きLDとADHD
読み書きLDとADHDの併存率は高く、50%近くになります。留意すべきことは、両者は互いに影響はしますが、異なる機能的な問題という事です。よくある誤解にADHDの影響で、読み書きが苦手というものがありますが、文字と音の結びつき(デコーディング)や文字記憶の形成に問題があるケースが多いです。
DHD の影響が強い読み書きLD では、以下のタイプが考えらます。 (1)ADHD の多動衝動性が強く,学習に取り組めないタイプ (2)目と手の協応が悪く、字が粗雑で、書字の困難感が強い(DCD を併存も多い)タイプ (3)読字障害だが,不注意優勢型 ADHD で,不注意が目立つ タイプ
読み書きLDと負担感
読み書きLDの問題の本質は「負担感・疲労」。読めるけれども、文字を見ても音が浮かびにくく、単語が入らない。書けるけれども、文字の形を思い浮かびにくい。勉強すると、頭が疲れて、耐えられなくなる。支援的介入も、機能改善トレーニングも、この「負担感」の軽減を目的とするべきと考えます。
今回、採択された臨床研究でも読み書きパフォーマンスの変化と同時に「負担感・疲労」の主観評価を行っています。パフォーマンスのみ向上して、負担感は変わらないならば、代償的な変化でしかないので、パフォーマンスの変化と負担感の軽減がセットであることが重要です。