ディスレクシア(難読症・読字障害・発達性読み書き障害)の診断について

 

ディスレクシアは、文字の「読み書き」に特徴的な困難を持つ学習障害の1つです。

全世界で5%〜15%ほどのディスレクシア症状の人が存在すると推定されています。

日本では難読症、読字障害、発達性読み書き障害、などと呼ばれています。

ディスレクシアの診断は、専門の医師により国際的な診断基準に基づいて行われます。代表的なディスレクシアの診断基準として、DSM−5(米国精神医学会の診断基準)とICD‐10(世界保健機構の診断基準)の2つの診断基準があります。

この2つの診断基準ではディスレクシアを下のように定義しています。

 

1米国精神医学会の診断基準DSM-5(2013)

特異的学習障害(LD)のうち、読み障害を伴う場合として以下の項目があげられています。

・単語の読みの正確さの障害
・読み速度と流暢性の障害
・読解の障害

2WHO(世界保健機構)の診断基準ICD-10(2,3年後改定予定)

・特異的読字障害Specific Reading Disorder
・読みの到達度が知能・年齢・教育からの期待値より低い
・読みの理解力、読みによる単語認知、デコーディングに困難さが見られる
・読みを必要とする課題の困難さ、綴字(書字)障害の併存、言語の遅れの既往がある

ディスレクシアの原因は、全般的な知能が低いわけでもなく、また視力や聴覚に問題があるわけではありません。

脳の部分的な機能不全が認知に影響して、文字の「読み」の問題として現れる事が原因です。特に、文字の読み書きを難しくする原因の1つに「音韻処理能力(デコーディング)」の弱さが報告されています。

また、文中の単語をスムーズに認識できないなど「視覚辞書」の弱さも報告されています。

 

ディスレクシアの症状について

英語圏では、英語は文字と読みの関係が複雑な言語ので「読めない(難読状態)」のディスレクシア症状が一般定期です。

一方で、日本語の「仮名(ひらがな、カタカナ)」は文字と読みの関係がシンプルなので、ディスレクシアの人でも、何とか読むことが出来ます。

しかしながら、「読めるけど、とても苦手」「読み間違い、書き間違いを頻発する」「逐次読みで遅くしか読めない」「文字を読むと頭がひどく疲れる」など、文字の読み書きを頑張っているけど、常に困難がつきまとっている子供の中にひっそりと隠れています。以下、日本におけるディスレクシア症状を紹介します。

《読みの問題》

・幼児期に文字に関心が薄い(覚えようとしない、読もうとしない)
・文字を1つ1つ拾って、ゆっくりでないと字が読めない(逐次読み)
・単語や文節の途中を区切って読む
・文中の文字を指でなぞらないと読めない
・沢山の文字や単語が狭い行間に詰まっていると読みにくい
・文字を読んでいるとすぐに疲れる(易疲労性)
・文の読みにくい箇所は読み飛ばしたり、変えて読む

《書く事の問題》

・「わ」「は」や「お」「を」など、同じ音の文字の書き間違いが多い。
・「め」と「ぬ」「雪」と「雷」などカタチが似ている文字の書き間違いが多い。
・促音(「てっぽう」の「っ」)、撥音(「なんでもない」の「ん」)
・二重母音(「おかあさん」の「かあ」)など特殊音節の誤りが多い。

特に、ディスレクシアは、文章を読む事が苦手で、無理に読むと頭が疲れる(易疲労性)があるので、ますます文章から遠ざかり、語彙や知識の習得が遅れて、学校の勉強もついていけなくなる、という悪循環に陥っている状態となります。

 

ディスレクシアの診断の流れ

日本でのディスレクシア診断は、DSM‐5(米国精神医学会の診断基準)やICD‐10(世界保健機構診断基準)を参考に行われますが、より具体的に鑑別診断を行なうには、「特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン」に掲載されている「読み書き症状のチェック表」により症状のチェックを行います。

このチェック表では「読字困難が7項目以上、または書字困難が7項目以上該当する」ことを基準としています。

さらに、ひらがな音読検査により音読スキルに異常があることを確認することが必要です。「ひらがな音読検査」は「単音連続読み検査」「単語速読検査(有意味語)」「単語速読検査(無意味語)」「短文音読検査」から成り立っています。

平均値から標準偏差の何倍遅いのか計算して評価します。4つの音読検査のうち2つ以上の検査で「音読時間」もしくは「読み誤り」が平均の2SD(標準偏差)以上遅い場合が基準となります。

 

日本におけるディスレクシアの診断基準

①症状チェック表
読字困難が7項目以上、また書字困難が7項目以上該当する

②ひらがな音読検査
4つの音読検査のうち2つ以上の検査で、音読時間(もしくは読み誤り)が平均の2SD(標準偏差)以上遅い

 

ディスレクシアの診断フローチャート

ディスレクシアの鑑別診断を行なうには、ディスレクシア以外の原因の読み書きの問題と区別する必要があります。以下「T式ひらがな音読支援の理論と実践(小枝達也、関あゆみ)」に掲載されてるディスレクシア診断のフローチャートとなります。

 

「診断フローチャート図」小枝達也、関あゆみ著書「T式ひらがな音読支援」から引用

 

まず、学習環境が不十分な子供は避けなければいけません。経済的理由や保護者の虐待などにより、勉強ができる環境ではなかった、帰国子女であり母国語が日本語ではないなどです。

次に全般的な知的な遅れがないことも重要です。知的障害やその境界域の学習困難は、全般的な知能水準に対して、特に「読み書き」に限定した困難を抱えるディスレクシアの診断基準には当てはまりません。

さらに、ADHDとの鑑別が重要になってきます。不注意による読み書きの誤りは、ADHDのお子さんに多く見られる症状です。

全て「NO(該当せず)」となった場合、ディスレクシアの可能性が高くなります。その上で「症状チェック表」で症状を確認して、さらに「ひらがな音読検査」で2つの音読検査で異常値を示していた場合は、診断に該当すると判断します。

このエントリーをはてなブックマークに追加