ディスレクシア(読み書き学習障害)の診断|診断の流れ(医療機関・相談機関一覧)

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【記事執筆者】

サワルグリフ代表  言語聴覚士 宮崎圭佑

学習障害(ディスレクシア,算数障害) への触覚学習利用を専門としています。【経歴】京都大学大学院 人間健康科学系専攻 脳機能リハビリテーション科学分野卒業,一般医療機関,京都大学医学部付属病院 精神科診療部を経てサワルグリフ開業 


 

(音声ガイダンス)

 

ディスレクシアは文字の読み書きに難しさを持つ学習障害です。日本では「発達性読み書き障害」と呼ばれています。国内では5%〜10%ほどの人が、何らかの読み書きの課題を抱えていると報告されています。全般的な知能は正常域なのに、読むことや書くことに限り、著しく苦手です。

 

ディスレクシアの診断は、国際的な診断基準に基づいて行われます。一般的に米国精神医学会の診断基準(DSM5)WHO(世界保健機構)の診断基準(ICD10)が利用されます。

 

1米国精神医学会の診断基準DSM-5

限局性学習症(SLD)のうち、学習上や学力の面での困難さについて、なんとか対応しようと対策したにもかかわらず、次の症状の少なくともひとつが、少なくとも6ヵ月間継続している。

・単語の読みの正確さの障害
・読みの意味理解の難しさ
・スペル(書字)の障害
・書字表出の障害

2WHO(世界保健機構)の診断基準ICD-10

・特異的読字障害Specific Reading Disorder
・読みの到達度が知能・年齢・教育からの期待値より低い
・読みの理解力、読みによる単語認知、デコーディングに困難さが見られる
・読みを必要とする課題の困難さ、綴字(書字)障害の併存、言語の遅れの既往がある

ディスレクシアの原因としては、読み書きに関する「脳の機能不全」が報告されています。

中核となる機能的な原因は、頭の中で文字を音と結びつける「デコーディング」能力の弱さと、目で見た文字列を単語として一纏めに認識する「視覚認知能力」の弱さです。(文字を見ても、頭の中で自然と音が結びつかない、また単語を見ても読み方が自然と浮かばないなど)

その他、文字の形を認知して覚える視覚性記憶の弱さや、音を頭の中で把握して操作する音韻処理機能の弱さも報告されています。

ディスレクシアの診断では、読み書き機能に着目して、ADHDや知的障害など他の原因による読み書きの問題と鑑別しながら診断が行われます。(ただし、ADHDやASDの重複も多いのが特徴です)

 

【何処に相談するのか?】

【LDを見てもらえる医療機関・相談機関】 全国LD親の会作成のリスト

学校に上がって、読み書きの苦手さを感じたら、早めに専門家に相談する事をおすすめします。評価と診断をしてくれる医療機関(クリニック・病院)を探す必要があります。

LDを見てくれる医療機関や民間の療育機関の情報として、全国のLDを持つお子さんの親御さん達が作成してくださったリストがあります(感謝します)。是非、参考にしてください。

 

ディスレクシア(発達性読み書き障害)の症状について

(音声ガイダンス)

 

ディスレクシア(発達性読み書き障害)の問題は「読み」と「書き」に分けて観察できます。読みの症状としては、まず幼少期は一般的なお子さんよりも、文字に関心が薄い傾向があります。(本を読む素振りや、TVのテロップなどに関心が無い)

また、低学年の時は、文字を1文字ずつ拾って読む「逐次読み」が目立ちます。文字と音の自然な結びつきが難しく、単語として一纏めに読むのが苦手だからです。

そして一番重要なのは、読むと疲れる(易疲労性)です。読むと疲れるので文字から遠ざかり、語彙の貧困や学業不審に繋がります。

 

《読みの問題》

・幼児期に文字に関心が薄い(覚えようとしない、読もうとしない)
・文字を1つ1つ拾って、ゆっくりでないと字が読めない(逐次読み)
・文字を読んでいるとすぐに疲れる(易疲労性)
・文の読みにくい箇所は読み飛ばしたり、変えて読む(勝手読み)
・読み間違いが多い

 

書字の障害としては、まず「文字を覚えること」自体が苦手です。平仮名は覚えられても、なかなかカタカナなどは覚えられない文字があったりします。特に繰り返し書いても、なかなか漢字が覚えられません。

覚えた文字も書き間違いが目立ちます。「わ」「は」など同じ読み方の文字の書き間違いから「雪」「雷」のような似たカタチの書き間違いまで、幅広く観察されます。

英語学習においては、英単語を覚えることが苦手です。英語は文字と読みの対応が複雑な言語なので、ディスレクシアの方にとって、より負担が大きいからです。

 

《書字の問題》

・「わ」「は」や「お」「を」など、同じ音の文字の書き間違いが多い。
・「め」と「ぬ」「雪」と「雷」などカタチが似ている文字の書き間違いが多い。
・覚えられない仮名(平仮名,カタカナ)がある
・漢字を何度書いても覚えられない
・英単語を何度書いても覚えられない

 

読みの負担が引き起こす学業不振

 

ディスレクシアで問題となるのは「読みの負担」です。日本語圏のディスレクシアは、仮名は文字と音の対応がシンプルで、比較的読みやすい言語なので、殆どのお子さんが読むことはできます。

しかし、読むと疲れる易疲労が生じるので、次第に文字を読まなくなり、語彙が不足していきます。読むことに精一杯だと内容も理解できずに、読解力も身につきません。

このような「読むのがしんどいから読まない⇒語彙が身につかない⇒文章を読んでも理解できない」という負のスパイラルに入ると、学業不振となり、文字の読み書きから離れてしまう事になりかねません。

以下のチャートは、小林達也、関あゆみ先生の本「T式ひらがな音読支援の理論と実践」に掲載されている読みの負担から学業不振になる流れを表したチャート図です。負のサイクルに陥る前に、できるだけ読み書き支援の早期介入をすることが重要です。

 

ディスレクシアの診断の流れ

 

(音声ガイダンス)

 

ディスレクシア(発達性読み書き障害)の診断では、読み書き困難について、ディスレクシアと「他の要因や原因」との鑑別が重要になります。(例えば学習環境の問題や、全般的な知的能力の問題で読み書きが苦手なのかです)

それに加えて「子供の得意な能力と苦手な能力」の評価や「ASDやADHDなど他の特性との鑑別や重複」など、読み書きに影響を及ぼす他の様々な特性の評価も重要になります。

 

生育歴や現状の問診

未就学児のときからの文字に対する反応(文字に興味を持っていたか,など)、学習状態(環境含む)、現在の現状の読み書きの問題を把握します。

読み書きの問題は「特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン」に掲載されている「読み書き症状のチェック表」などを利用して把握を行います。(このチェック表では「読字困難が7項目以上、または書字困難が7項目以上該当する」ことを基準としています)

 

知能検査

読み書きの遅れが全般的な知的能力の問題ではないこととの鑑別を行います。また直接的な読み書きの検査ではありませんが、お子さんの得意な能力と苦手な能力を知り、全般的な特徴をみて、読み書きの問題に影響している可能性を知るために必ず行います。

WISK-Ⅵなどの知能検査が代表的です。WISKでは「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリ」「処理速度」などの指標に分かれています。

 

ディスレクシアの場合、ワーキングメモリの数唱、語音整列が低い事が多く、また処理速度の「符号」(書き写しの速度に影響することあり)、「記号探し」(似たような文字の間違いに影響することがある)が低いことがよくみられます。(ワーキングメモリや処理速度が低いと、全IQが下がり知的境界域と判断されることがありますので注意が必要です)

 

加えて、漢字を覚えたりする視覚記憶機能を調べる目的で「Rey-Osterrieth複雑図形検査」を行う場合や、音韻性ワーキングメモリを調べる目的で「単語の復唱」「無意味語の逆唱課題」を行う事もあります。

 

読み書きの機能評価

ディスレクシアの診断に利用される読み書きの評価には「特異的発達障害・治療のための実践ガイドライン」に沿う音読検査と、読み書きの到達度を評価する「小学生の読み書きスクリーニング検査(STROW)」があります。

 

「特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン」

このガイドラインでは「読み書き症状のチェック表」の基準(読字困難7項目以上、書字困難7項目以上)に加えて、ひらがな音読検査により音読スキルに異常があることを確認します。

音読検査は「ひらがな音読検査」「単音連続読み検査」「単語速読検査(有意味語)と(無意味語)」「短文音読検査」から成り立っています。

平均値から標準偏差の何倍遅いのかを計算して評価します。4つの音読検査のうち2つ以上の検査で「音読時間」「読み誤り」が平均の2SD(標準偏差)以上遅い場合が基準となります。

この検査様式は、読み書きの問題を仮名レベルの早い段階から検出できるメリットがあります。また保険報酬対象であるのも特徴です。

 

小学生の読み書きスクリーニング検査(STARW)

読み書きの苦手な子供に、文字の音読と書字の検査を行って学年の基準値(平均値と標準偏差)と、比べる検査です。ディスレクシア自体の検査ではなく「客観的な読み書きの到達度」を測定します。仮名1文字(ひらがな、カタカナ)、仮名単語、漢字単語の読み書きを行います。

この検査の特徴は、平仮名の音読評価だけではなく、カタカナと漢字の音読が評価できること。また漢字を含む「書字」の評価ができることがあげられます。総合的な読み書きの到達度を評価できます。

 

「触るグリフ」によるディスレクシアの早期介入

 

(音声ガイダンス)

読み書きの問題には、問題が顕在化して学業不振が生じる前の早い段階での介入が重要です。実際の困難は確認されているのに「医学的診断が確定しないと介入できない」となると、その間に他の子供達との差が拡大してしまいます。ディスレクシアの特性に合った読み書きの学習法を実施する必要があります。(つまり「診断」と「介入のタイミング」は分けて考える必要があります)

 

標準タイプの触読版シートです。小学2年生までに習うすべての文字と仮名が入っています。ディスレクシアを含めた、様々な文字の読み書きの問題に利用できます。特にディスレクシアを原因とする「文字を読むと疲れる」「文字がスムーズに読めない」「漢字やカタカナが覚えられない」といった問題の改善に有効です。

 

このような読み書きに課題を抱える方の教材として、触るグリフ「日本語の仮名と短文と漢字シート」を開発しました。

この教材は「見ながら触れて音読する」触読学習を介して、仮名(平仮名,カタカナ)から仮名単語、基礎漢字にかけて土台となる文字のカタチと単語の綴りを段階的に学びます。手で触れて確かめながら、基本的な文字のカタチとパターンを記憶形成することで、読み書きの負担を減らします。

読み書きに問題を抱えるお子様から大人の方まで幅広くご利用できます。

 

 

「触るグリフの利用」の相談について

代表 宮崎 圭佑 【資格・学位】 言語聴覚士免許 (国家資格) 修士号 (京都大学)  【経歴】京都大学大学院 人間健康科学系専攻 脳機能リハビリテーション科学分野卒業, 京都大学 医学部付属病院 勤務を経てサワルグリフ開業

日本人は英語学習に苦手意識を持つ人が多いので、ただの「苦手意識」とディスレクシアが引き起こす「障害」の境界線は曖昧です。英語に対する困難が気になる場合は、お気軽にご相談ください。

 

 

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