触るグリフ(実施の流れ)

 

触るグリフは、触独版を利用した読み書きの学習プログラムです。LDの特性を持つお子さんの場合は、実施プロトコルに沿って学習することを推奨しています。

ただし、基本シートが簡単すぎて、子供のモチベーションが維持できない場合は、漢字シートや自動化シートから始めてもかまいません

 

日本語の読み書き学習(実施の流れ)

 

ディスレクシア(発達性読み書き障害)を含めた読み書きの課題は「読み」と「書き」のどちらも苦手な場合や、「読み」は比較的保たれているけど、カタカナや漢字の定着に課題がある「書字」を中心とした問題など、様々なパターンがあります。

基本シート以降は、その子の特性に合う触るグリフを選んで実施する流れになります。(ただし「書字」のみ困難に見えても、検査すると「読み」にも課題がある場合は多いです


 

① 基本教材(標準版 or 小学1年生版シート)

(左)標準版シート,(右)小学生版シート

 

触るグリフには、まず最初に、一通りの基本的な「文字のカタチ」と、単語の「一纏め読み」を学ぶ「標準版シート」か「小学1年生版シート」のどちらか一方を行います。(標準版シートは小学2年までの漢字が含まれていて、小学1年生版シートは漢字は小1までですが、基本的な文字課題が多く含まれています)

この基本シートで、仮名(平仮名,カタカナ,基礎漢字)の字形イメージの形成と精緻化を行います。さらに、字形の触覚刺激を認知的手がかりとして、文字と読み方(音)の連合記憶形成を行い読みの自動化を促します。

この2つの基本シートは、全ての人に取り組んでいただきたい土台となる教材です。

 

【追記1】基本シート以外から始める場合

高学年で、仮名や漢字の内容が簡単すぎて本人のモチベーションが維持できない場合は、それ以降のシートからはじめても問題ありません。本人が意欲的に取り組むことが最も大切です。

追記2】LDではない児童の学習利用

触覚を利用して漢字を効率的に覚えたいなど、LDではない児童の学習利用では、どのシートから初めでも問題ありません。いきなり小学5~6年生の漢字などを実施してもかまいません。

追記3】「ミチムラ式漢字カード」と「触るグリフ」の組み合わせ学習

漢字の学習においては、ミチムラ式漢字カードの部分パーツごとに唱えて覚える学習法と、部分パーツに手で触れて学ぶ触るグリフでの学習法の相性が良く、組み合わせて利用することを推奨しています。⇒ミチムラ式と触るグリフを組み合わせた効果的な漢字学習法について

⇩      ⇩

 

② 継続教材(読みの自動化シート,漢字学習シート)

(左)読みの自動化と流暢性シート、(右)漢字学習シート

 

基本シートを実施して、一定の効果がみられた方は、次の継続版シートへの適応と効果も高いと考えられます。その場合「読み」に課題があり改善を目指したい方は「読みの自動化と流暢性を促すシート」を実施してください。単語の「一纏め記憶」を形成して読みの自動化を促します。

漢字を定着させたい方は「漢字学習シート」を実施してください。手で触れる学習で漢字の字形の記憶を精緻かつ強固に形成します。(小学2年~3年3年~4年4年単体5年~6年)というセットで販売しています。

もちろん、負担にならないのであれば、両方同時に始めても問題はありません。

 

【追記1】漢字シートの「読み」の効果について

『漢字学習シート』にも、沢山の短文が含まれているので読みの流暢性改善の効果はあります。ただし、『読みの自動化と流暢性シート』は、より「読み」に特化して作っているので、読みの改善や負担軽減を目指す場合は、後者をご利用ください。

【追記2】手で書く学習との組み合わせ効果

『漢字学習シート』で漢字を学ぶ場合は、文字に触れた後で『指文字(空書)』か『紙に一度だけ書く』という過程を推奨しています。手で触れて学ぶ「字形の平面形状記憶」と、手を動かす「書字運動記憶」の組み合わせで、効果的に漢字の記憶を形成することができます。


 

算数障害に対する実施教材

 

 

読み書きの苦手さと、算数の苦手さ(算数障害)は一定の割合で併存する事が知られています。特に「数概念」と「四則演算」に課題を抱える児童が多いです。このような数字に紐ずく「数量や個数のイメージ」「四則演算(足す,引く,掛ける,割る)」に伴うイメージ変化などを、触るグリフ「数量と四則演算のシート」では、手で触れて確かめる事で学びます。また九九の暗記シートも入っており九九の読み方と数字との連合記憶形成を促して効率的に覚えられます。

 

算数の苦手さの原因は、数字と具体的な物・量との結びつける「数処理」の問題や、数字と個数や量のイメージの結びつき、順序のイメージの結びきに関する「数概念」の弱さの問題、それらを数字と数概念を頭のイメージ操作する「ワーキングメモリ」の問題などが考えられます。

これらは独立したものではなく土台となる「数処理」⇒「数概念」⇒「ワーキングメモリ」の順に、互いに影響を及ぼし合いながら算数障害を引き起こしていると考えられています。

触るグリフ算数シートでは、主に「数処理・数概念」のイメージ形成と操作を促す事を目的としています。

 

英語学習に関する実施の流れ

触るグリフで英単語を見ながら触れて音読すると、触覚刺激を認知的なキュー(手がかり)として、効果的な「スペル」と「読み方(音)」の結びつき(連合記憶形成)を促すことが出来ます。

この記憶が形成されると、英単語を覚える時には、スペルと読み方の「組み合わせ」として覚えやすく、思い出しやすくなります。読む時は、これらの学習記憶に照合することで読みやすくなります。

 

 

基本的な「実施の流れ」として、立体化されたアルファベット文字も大きく、フォニックスに対応した単語を段階的に学ぶ『フォニックス版シート』で「スペルと読み方」の結びつきを形成してから、さらに『英単語記憶定着シート』で実際に沢山の英単語のに触れる事で汎化を促します。

初めて触るグリフの英語教材を利用する場合は、この①⇒②の方法を推奨しています。

 

【英単語記憶定着シートから先に始める場合】

高校受験を控えているなど、限られた時間の中で効率よく英単語学習を行いたい場合は『英単語記憶定着シート』からはじめてもかまいません。必ずしもフォニックス版から始める必要は無く、沢山の英単語の「スペル」と「読み方(音)」のパターンに触れることで、読みの規則が自然と定着してきます。フォニックス版から始める場合に比べると効率は落ちますが、分量も多いので同じ効果があります。

このエントリーをはてなブックマークに追加