触るグリフ 日本語シートの特徴と利用方法

 

触るグリフついて

 

触るグリフは「見ながら触れて音読する触読学習プログラムです。文字の形(カタチ)から、綴りのパターンへと段階的かつ系統的に触読して学びます。

近年の研究では、触覚情報と視覚情報は頭の中で統合される事が知られていますので、2つの感覚モダリティを利用することで、より強固かつ精緻な文字のカタチと綴りの記憶イメージが形成できます。この形成された記憶イメージを、頭の中で利用することで、読み書きの改善を目指します。

 


触るグリフの原理として、触覚-視覚間の認知的統合があります。2000年代からの生理学研究では、手で触れた触覚情報は脳内で視覚情報と統合されて、マルチモーダルイメージを形成する事が分かっています。モノなどを見るだけではなく「手で触れると確かめやすい」というのは直感的に分かるかと思いますが、これには生理学的な裏付けがあります。

目で見る「視覚」だけで認識しづらかったり、視覚認知プロセスが弱い方の場合は「触覚」を迂回路として利用できるわけです。触るグリフは読み書き障害の視覚認知プロセスの問題に対して、この原理を利用しています。

 


見ながら触れて学んだ触覚情報は、頭の中で視覚性記憶に統合されるので、触読学習で「文字のカタチ」の記憶イメージと「単語の綴り」の記憶イメージが形成されます。

この頭の中の記憶イメージを読み書きの時に利用することを目的としています。例えば、思い出して書く時には「文字のカタチ」の記憶イメージを想起の手がかりとして利用できます。視て読む時は「綴りパターン」の記憶イメージに照合することで読みやすくなります。

 


触るグリフで重要なのは、段階的に触覚-視覚パターン学習を行うことです。まず仮名シートで平仮名,カタカナの文字のカタチを記憶形成します。次に仮名単語や短文シートで基礎漢字を含んだ単語の「綴り」パターンの記憶を作ります。

そして最後に基本的な漢字のカタチと構造を漢字シートで学びます。文字のカタチ⇒文字の綴り⇒漢字の構造という流れで、日本語の読み書きに必要な土台となる記憶を形成します。この土台となる文字のカタチと綴りの記憶が頭の中で定着していると、読み書き時には手がかりとして利用できるので、読みやすく、思い出しやすくなります。

 

触るグリフ『日本語シート』の対象となる方

 

触るグリフ「日本語シート」の利用対象者は、日本語の「読み書き」に問題を抱える方です。読み書きの問題は様々なものがあげられます。

読み」の問題としては、スラスラと読めない,読むと疲れる,読み間違いが多いなどです。書字の問題は、仮名や漢字が何回書いても覚えられない、思い出せない問題(特にカタカナと漢字が多いです),また文字が崩れるなどの書字自体の苦手さなど多岐にわたります。

 


読み書きの問題の原因はいくつかあげられます。一番多い原因は発達性ディスレクシアです。頭の中で文字と音を結びるける機能が弱かったり、文字のカタチや綴りを捉える機能が弱い事で、読み書きが苦手になります。私は、触るグリフの触読学習はディスレクシアの視覚認知プロセスの問題に対しては、最も相性が良いと考えています。

ディスレクシア以外にも、知的発達の遅れがあり、読み書きが苦手なケースも考えられます。またADHDの注意の問題に対しては、触るグリフの「手で触れて確かめる」という能動的なプロセスが記憶の精緻化に有効かと思います。ディスレクシア以外の原因であっても、基本的に触覚と視覚の2つの情報を入れることで記憶の補強と精緻化が可能です。

 

 

触るグリフの使い方について

 

触るグリフの触読学習の期間は、まずは8週間です。短いと思われるかもしれませんが、文字のカタチや綴りパターンを触れて覚えることは、自転車に乗るようなものなので、8週間あれば一定水準の記憶の形成と定着があります。実施前に読み書きの状況をビデオやカメラで撮影して、触るグリフ実施前の状態を記録しておきます。読み書きの変化を2週間毎に評価していきます。

最初の2週間では仮名と仮名単語シートから行って仮名文字のカタチと綴りを学ぶ,次の2週間では短文シートで漢字を含む単語の綴りを学びます,さらにその次の2週間で基礎漢字シートで漢字の外形と構造を学びます、最後には1日ごとに今までの触読版シートを順番に行います。触るグリフの実施期間は、まずは合計8週間,4回の評価を行います。

 


小学1年生版シートも、基本的には標準版シートと同じです。触るグリフ実施前から2週間毎に評価をしながら進めていってください。お子様の特性に併せて、進めていく学習シートの枚数を分けて実施するなど、無理のない範囲とペースで続けていただければと思います。

 


触るグリフの「見ながら触れて音読する」触読学習には「注意点」と「コツ」があります。まず立体文字に触れる時は、凸部分の画線を指先でなぞるのではなく、指の面で触れて文字全体のカタチを確かめながら読むことです。ゆっくりと文字のカタチを確かめながら読みましょう

慣れてくると触読の速度が上がりスムーズに読めるようになります。また、慣れてくると文字は「ひとまとめ」に読む方が良いでしょう。「まむし」という単語の場合、ま、む、し、と最初は読みますが、慣れてくると「まむし」と単語として音読することをおすすめします。ひとまとめの綴りパターンとして単語を認識することが重要です。

 


触るグリフは、沢山の文字のカタチと綴りのパターンを記憶して、頭の中に記憶の辞書を作る事を重視しています。その記憶の辞書を「手がかり」として読み書きで利用します。ですので、カタカナだけ、漢字だけ、など苦手な文字だけ行うのも良いのですが、出来るだけ最初から最後まで8週間かけて一通り行っていただければと思います。

もちろん、どうしても続かない場合は苦手な文字だけ練習してもかまいません。また、お子様のモチベーションが続かない場合もあります。その場合は、おやつなど、報酬を設定して動機づけをしてもかまいません。理想は自ら関心を持って学んでいただく事ですが、触覚からの記憶ネットワークは動機づけの種類関係なく、形成されていきます。

 


触るグリフの実施では、出来る限り2週間ごとの「評価」を行ってください。読みの評価シートと書字の評価シートがあります。触るグリフ実施前に音読の様子を「ビデオ撮影」、書字を「カメラ撮影」してます。そして触るグリフ実施後も、また2週間ごとに撮影して実施前,2週間毎で変化を比べてみてください。変化を比べる事でモチベーションの向上や効果のある無しにも繋がります。

 


読みの評価では、2週間毎の評価シートの音読を客観的な観点と、主観的な観点で比べてみてください。客観的な観点では、一文字ずつ読む「逐次読み」が減り、スラスラ読めているかが重要です。次に読み間違いが減ったか、また文章を読む速度が変化したかなども比べてみてください。主観的な観点では、読む時に疲れる感覚(易疲労性)が減ったか、読みにくさや苦手意識が軽減したかなど聞いてみてください。

 


書字の評価では、読み上げた文字を、実際に書いてもらいます。触るグリフ実施前に書けなかった文字が書けるようになったのか?思い出しやすくなったか?文字の書き方が変わったのか?を2週間ごとに比べてみてください。

書かれた文字はカメラ撮影するなどして記録しておいてください。触るグリフ実施前に読み上げて各文字は、全ての文字や単語を書くのは負担になるので、書けそうにない文字・単語を50個ほど選んで実施すると良いでしょう。

 

 

その他,ご協力について

 

最後にご協力のお願いになります。明らかな変化が見られた場合は、#触るグリフをつけて、前後の変化や実施の様子など、ツイッターやインスタグラムなどで発信していただければ嬉しいです。触るグリフは個人で営んでいるので、広告宣伝費を全くかけていません。利用者様の口コミで少しずつ広がればと考えています。よろしくおねがいします。

 

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