読めるけど苦手、読むと疲れる、漢字を何回書いても覚えられない児童(小学3年生)が、読みの流暢性を獲得して、漢字が覚えられるようにする実施方法

 

典型的な「日本の読み書きLD児童」の例を中心に、触るグリフの実施方法について解説したいと思います。

日本の読み書きLDのご相談で一番多いのは、小学2~3年生の学年ゾーンとなります。

未就学児(6歳)くらいの時期から「仮名に興味を示さない」とか、小学1年生時点で「何とか読めるけどたどたどしい(逐次読み)」など、発達性ディスレクシアの特徴が表れて、小学2年生~3年生前後になると、学校で学ぶ内容も増えてくると、「読めるけど、シンドイから、読むのが嫌いになる」「漢字を手で書いても覚えられない」という学業困難状態が顕在化します。

徐々に学校に行きたくなくなる「不登校」が目立ち始めるのも、この時期が多いのが特徴です

保護者の方は責任を感じる必要はなく、日本では読み書きLDに気づかれているお子さんの方が少ないので、十分早い段階での発見と介入となります(殆んどが暗数化しています)。

読み書きが苦手な背景には、以下の問題が考えられます

 

【読みの苦手さの原因】

①文字と音の結びつきの問題

⇒文字を見ても頭の中で音が鳴らないので、スムーズに文字が入ってこない。

②単語形態記憶の未形成

⇒頭の中で音が鳴らないと、言葉と文字列が繋がらず、単語形態記憶が未形成になる。単語形態記憶に照合できないので、単語として一纏め読みが出来ない。

※① ②の理由により、読みが苦手で、読むと疲れる状態になる。

 

【文字を覚える事、書く事の困難さ】

①文字のカタチのイメージが形成しにくい

⇒意味や音を帯びた文字の記憶イメージが生成しにくい。

②書く時に頭の中で文字が浮かばない

⇒ 「文字のカタチのイメージ」が弱いので、繰り返し手で書いても、手の運動イメージで補強しにくい。(その他、DCD的な不器用さの問題)

 

これらの機能的な問題に対して、触るグリフ実施後の読み書き変化として、以下の状態を目指します。

 

🔶触るグリフ実施で期待される変化

・文字を見ると、頭の中で音が鳴る

・単語が一纏めの単語形態として入ってくる

⇒文章が以前よりは、負担なく流暢に読めるようになる

・書く時に文字が思い浮かぶ

⇒以前よりは、書く時の文字が思い出しやすくなる。新たな文字も覚えやすくなる。

 

仮名文字が未定着(読めない文字がある)場合

仮名文字がまだ未定着(読めないなど)の場合は、小学生であっても、未就学児と同じ方法で実施してください。焦らずに着実に定着させていきましょう。

仮名が定着しにくい児童(未就学児含む)に対する仮名文字を記憶定着させる実施方法

 

触るグリフの実施方法

 

【触るグリフの通常の実施方法】

・仮名文字、仮名単語、短文の順番に段階的に「見ながら触れて音読する」

・カタカナ実施後は、並行して1日数個ずつなど漢字学習も行う

・触るグリフ実施前と各セクション実施後に、必ず再評価を行う

 

①平仮名、カタカナ(清音、濁音、特殊音節)、②仮名単語(平仮名、カタカナ)、③短文、④漢字の4つのセクションに分かれていてます。各セクションを1日1回、10日から2週間ほどかけて、8~10回繰り返したら、次のセクションに進みます(漢字は、カタカナ50音終了後をめどに、1日数個ずつなど、すすめてもかまいません)

触るグリフを実施する前に、付属の評価シートで読み書き能力もチェックします。1つのセクション実施後に再評価して、読み書き能力が変化しているかを比べます。

最後のセクション(短文)を終えると、最後の総復習として、今まで学んだセクションを1ごとに行います(1日目:仮名、2日目:仮名単語、3日目:短文)。

それを1日1回10日ほど繰り返すと、教材は終了となります。

 

(セクション1)はじめに、仮名1文字をしっかり学ぶ

 

 

最初に取り組む「セクション1」が最も大切なパートになります。

まずは「ひらがな」「カタカナ」のセクションをしっかり取り組んでいただきます。

お子様のモチベーションとしては「既に、読めるし書けるよ」という文字もあるかもしれませんが、実施する理由を説明して、理解してもらう事が大切です。

以下が、私が作成した「お子様への説明文」になります。

まずは「ひらがな」「カタカナ」の清音50音をしっかり定着させます。「ひらがな」は読みの基本となる文字です。「カタカナ」は漢字の基本パーツとなる文字です。

仮名文字(ひらがな、カタカナ)」の文字形態記憶の形成と、音の結びつきを完成させることが、もっとも効果の高い機能的アプローチとなります。

 

🔶 実施のポイント

・「仮名のカタチを指の腹でたしかめて音読する」を繰り返しましょう。

・今日は「ひらがな(清音50音、濁音、特殊音節)、明日は「カタカナ(清音50音、濁音、特殊音節)」のように日を分けて実施しても問題ありません。

・1つのセクションあたり合計で8回~10回ほど繰り返してください

・子供が負担なく続けれるペースで実施してください

🔶 2回程度は、映像音声を利用して実施してみる

・映像音声は文字のカタチと音を結びつける強力なツールです。

・文字のマークアップに併せて読み上げられる仕組みです。

・映像音声に併せて「触れて音読」する方法は、少し難しいので、無理に利用する必要がありません。8回~10回のうち、2回ほど仮名50音だけでも、試していただければと思います。

・必ず初回評価と、セクション1終了後の再評価を行う。

 

🔶触るグリフの触れ方について

触るグリフは、立体化された凸部の画線をなぞるのではなく、点字や盲牌のように「指の腹」で触れて、文字のカタチを確かめながら音読します。指の腹で文字形態の触知覚フィードバックを受けながら、声に出して読み上げる事で、①文字のカタチ、②文字と音の結びつき、③文字列の単語形態記憶、の①②③が形成される仕組みです。ご本人の拒否感なく続けられる事が一番大切です。少し粗雑にでも、触れて音読しているのなら「OK」としてあげてください。早いよりも、ゆっくり触れる事。無言ではなく、声に出して読み上げる事(読み上げられない場合は、保護者の方が、児童が触れたと同時に文字を読む)を意識していただければと思います。

 

 

 触るグリフ実施前と実施後の読み書き評価

触るグリフ実施前の読み書き状態を評価してもらいます。

セクション1実施前の評価が初回評価となります。

《読み能力の変化の様子》
44歳ディスクレシア男性 動画を再生する

実施前の読み書き状態が分からないと、介入後の変化が分からないので、必ず評価を行ってください。

変化が分からないと保護者もご本人(児童)もモチベーションが高まらないので、途中離脱してしまう傾向があります。

「読む様子」「書く様子」のスマートフォンでの動画撮影を必ず行ってください

・【読み評価】では、読みの流暢性を観察します。

・【書字評価】では、聴いてから文字を思い浮かべて書く書字想起を観察します。

触るグリフ実施前と実施後の「読み書き評価」は、①付属の「評価シート」と、②学校の教科書や課題などを用いた読み書きに様子③本人の読み書き時の変化(読みやすくなった。書きやすくなった、など)④保護者の方の日常の観察変化(漫画を読むようになった)など、多方面から評価してみてください。

難しい場合は、①の評価シートのみでも問題ありません。

①付属の「評価シート」での評価

②学校の教科書を読む様子や書き取り課題での観察評価

③本人の自己知覚(負担の軽減、読みやすさ、文字が思い出しやすい、など)の観察評価

④保護者の方の日常の観察変化(漫画を読むようになった、など)

 

(セクション2)仮名単語の触読で単語の記憶を作る

 

「セクション2」は、2モーラから7モーラからなる仮名単語を「見ながら触れて音読」するパートになります。ここでは、セクション1(仮名50音、濁音、特殊音節)で定着させた仮名文字のカタチの記憶や、文字と音との結びつきを、さらに単語レベルで触読することで、単語形態記憶の形成を促します。

触るグリフでは「仮名単語」「短文」のセクションで、触知覚のフィードバックを受けながら単語を音読することで、単語形態記憶の形成を促します。

 

仮名単語(セクション2)の実施のポイント

・はじめは、単語の文字は1文字ずつ触れてゆっくりと音読する

・徐々に単語を一纏めに読むように変化するけれど、これは問題はない(一纏め記憶が形成されている状態)

・仮名1文字が未定着ならば、3回に1回くらいは「セクション1(仮名50音、濁音、特殊音節)」に戻りながら実施しても良い

・8回~10回中、2回ほど、映像音声を利用してみる(無理に利用する必要はない)

・セクション2終了後には、再評価を行う。

 

仮名単語のセクション2も、基本的にはセクション1と同じです。

仮名単語にも映像音声が含まれています。映像音声のマークアップとタイミングを合わせて仮名単語の触読を行うと、強烈に文字と音の結びつきが促されます。

映像音声はタイミングを合わせるのが難しいので、無理に利用する必要はありませんが、2回ほど、試してみてみても良いかもしれません

 

「セクション3」短文の触読で学習内容の汎化を目指す

 

セクション3は、仮名短文のセクションです。今まで「セクション1」「セクション2」で学習した内容を、文章レベルでの触読を行う事で汎化を促します。より自然な読み流暢性を獲得することが出来ます。

セクション3(短文)の実施ポイントは以下になります。

 

【セクション3(短文)の実施ポイント】

・ゆっくりと、文章を指の腹で触れて音読する

仮名短文だけではなくて、その下にある漢字を含む短文も触読する

・仮名1文字が未定着ならば、3回に1回くらいは「セクション1(仮名50音、濁音、特殊音節)」や「セクション2(仮名単語)」に戻りながら実施しても良い

・セクション3(短文)実施後に再評価を行う。

 

「セクション1(仮名)」や「セクション2(仮名単語)」に比べると、セクション3(短文)の重要度は下がります。仮名1文字の定着などが未熟な場合は、セクション1や2に戻りながら、実施してください。

日本語版教材の重要度は「セクション1⇒2⇒3」の順番となります。

セクション3終了後に、また再評価をしてください。

 

最終サイクル(セクション1、2、3を1日毎に行う総復習)

 

【総復習】1日ごとに各セクションを交互に実施

 

セクション1,2,3を全て終えたら、最後に各セクションを1日毎に2週間ほど繰り返してください。

例えば、1日目はセクション2(仮名)、翌日(2日目)はセクション2、翌々日(3日目)はセクション3のような感じです。4日目にはセクション1に戻り繰り返します。

今まで学習した文字の記憶を再学習することで、より精緻かつ強固なものに仕上げていきます。

最後に最終評価をしてください。触るグリフ実施前「初回評価」と比べて、読みの流暢性、書く時に想起など、どのように変化したかを観察してください。

一通りの学習と、総復習を通して、読み書き能力は変化しているかを確かめてください.

 

漢字学習について

 

触るグリフの漢字学習は3つポイントがあります。

①セクション1(カタカナ)の終了後に漢字学習を行う

②聴覚法と組み合わせて触読学習を行う

③1日数個ずつなど、子供のペースで行う

 

①セクション1(カタカナ)の終了後に漢字学習を行う

セクション1の「カタカナ50音」を終えてから、漢字学習に進んだ方が良いという事です。理由としては、複雑な漢字も分解すると、殆どがカタカナを中心としたパーツ形態の集まりであり、これらカタカナの記憶が形成&想起できないと、新たに複雑な漢字は覚えられないからです。漢字学習は最初のセクション1から並行して実施しても問題ありませんが、カタカナのパートを終えてから取り組む事を推奨しています。

 

②聴覚法と組み合わせて触読学習を行う

ミチムラ式と触るグリフを組み合わせた漢字学習法

漢字の部首を唱えて覚える方法は「聴覚法」と言いますが、この唱える「聴覚ルート」からの情報入力と、触れてカタチを確かめる「触るグリフ」の相性は抜群です。例えば「強」という漢字は「弓、ム、虫」ですが、唱えながら部分パーツに触れる事で「聴覚」と「触覚」という2つのルートから、より強く記憶痕跡を形成することができます。具体的には「触るグリフを用いた漢字学習」について、という記事を参考にしてください。

聴覚法で用いる教材は何でもかまいません。個人的には以下の2つを推奨しています。

1)ミチムラ式漢字カード(かんじクラウド社)

2)全学年漢字覚えるカード(学研)

 

③1日数個ずつなど、子供のペースで行う

読み書きLD児童の漢字学習負担は大きく、子供が続けられる学習量が求められます。1日5個ずつなど「聴覚+触覚」を組み合わせる方法で実施してみてください。そして、翌日にもう1度同じ文字を繰り返してください。3日ほど繰り返したら、最後に手で書いてみてもいいいでしょう。文字のカタチの記憶イメージが形成された上で、手を動かして書くと、運動イメージが繋がります。頭の中で浮かんだ文字のカタチを、手を動かして一連の記憶が繋がります。

 

触るグリフ実施後の読み書き能の変化について


44歳ディスクレシア男性 動画を再生する

触るグリフでは「負担の軽減の結果として、パフォーマンスが向上する」という自然な変化を目指しています。文字を見たら頭の中で音がなる。文字が思い浮かべやすくなるという機能的変化は、読み書き時の負担を減らし、気づけば、自然と読むようになるなど、行動の変化として表れます。

文字は、長い人間の歴史の中で、つい最近出てきた道具です。少し無理な脳の使い方をするので、文字が苦手な脳の個性の人もいます。それが読み書きLDです。苦手な部分を補完して繋げることで、文字認知処理のネットワークが形成されていきます。

触知覚は原始的な感覚で、視覚イメージと強固かつ精緻に強める作用があり、また音と結びつける媒介作用もあります。触知覚の不思議な作用が、お子様の読み書きの困難に対して、お役に立てれば嬉しい限りです。

今までのユーザー体験談もありますので、参考にしてください。

 

 

 

 

 

この記事をシェアする