触るグリフの医療機関での導入事例を紹介します。触るグリフを利用のした臨床研究を、私(宮崎)が教材を寄贈する形式で、国内外の医療機関に取り組んでいただいていただいています。こちらは、小児精神神経科学会で発表された、愛知県瀬戸市にある公立陶生病院の言語療法室の言語聴覚士の事例報告研究です。
第134回 日本小児神経科学会発表 「多職種連携により学習支援として多感覚学習を導入した限局性学習症の一例」
全般知能の遅れと、発達性ディスレクシアの特徴を示す児童に対する触るグリフを用いた8か月間の取り組み事例となります。
読み流暢性の改善、文字想起の改善、そして、WISKの複数項目の向上がみられました。
今の日本では、LDの機能的アプローチにおいて、医療機関と学校や放課後デイとの連携が課題となっています。読み書きLDの機能的アプローチには「頻度」が欠かせません。しかし、医療機関では頻度を確保することが出来ません。毎日の学びの場である学校や放課後デイサービスで、教材を利用して指導していただき、その効果検証を行うスタイルが良いと考えます。
スライド1枚ずつ解説したいと思います。

言語療法室の関先生の発表です。

こちらは、触るグリフを寄贈しただけで、私自身が臨床研究に関与しておりません。病院側も弊社事業に対するコミットは無く、利益相反はありません。

研究の背景です。LD児童の機能的アプローチには「定期的な評価」と「一定頻度の指導」が欠かせません。たまに病院に来て、専門職が指導するだけでは、頻度が足りないわけです。そうなると、ベースの特性評価と介入効果の評価は医療機関で行い、日々の学びの場である学校や読み書き指導を行うスタイルが最適となります。今回は公立陶生病院で機能評価を行って、学校の学習時間に触るグリフを用いた読み書きトレーニングを行った事例です。

支援級で学ばれている読み書きLDの特性を強く持つ、境界知能域の高学年の女児とのことです。

初期評価の結果です。読みは流暢性も書字課題も全ての項目で、2SD(+-)を超えていました。音韻意識や視覚認知機能など、読み書き能力の背景認知機能の成績も低い状態です。全般性知能はWISKで74であり、境界域に相当します。言語理解項目の低さから、語彙知識が身に付きにくい状態である事がわかります。ワーキングメモリ課題の低さでは、音韻意識の低さなどからも、頭の中での音韻表表象の弱さが垣間見えます。

5年生の5月時点の初期評価の段階で、ビジョントレーニングと通常の平仮名の読み書き練習もしていたようです。12月に入ってから病院の医師や学校の支援級の先生、保護者の方を交えて、多職種での会議を行い、そこで多感覚学習法(触るグリフ)を支援級で実施する事が決まったようです。こういう医療機関と学校の連携会議は珍しいので、素晴らしい事だと思います。触るグリフの実施は、5年生の2月から、6年生の7月までの5か月間のようです。その後も引き続き通常の仮名の読み書き指導を継続して、6年生1月に、中学入学へ向けての全体の多職種会議を終えた後、3月にリハビリ終了となりました。

5年生1月時点の多職種会議でお話しされた内容となります。触るグリフの提案と、病院での定期評価、学校への評価結果の共有などをお話しされたようです。学校側も学習状況を医療機関と共有するなど

寄贈したのは触るグリフ「日本語の仮名と漢字と短文シート」になります。学校の支援級では、週3~4日を、1日20分前後かけて行われたそうです。これは理想的な実施頻度と時間だと思います。さらに月2回での医療機関での学習状態の確認とSTの方の実施指導も含まれます。通常の触るグリフの実施法と同じく、ひらがな、かたかな、仮名単語、短文、漢字という流れで実施したと推測されます。

触るグリフ実施6か月後の変化です。STRAW-Rでの読み書き成績の向上が見られました。それだけではなく、漫画を読む量と頻度が増えたり、学校での書字課題の成績なども上がったそうです。この「漫画を読む頻度と量が増える」というご家庭での観察変化は、よくみられます。読み負担が減る事で、自然と文字に向かう機会が増えるのです。

実際のSTRAW-Rの結果です。平仮名、カタカナの音読は、初回評価時は逐次読みでしたが、単語として一纏めに読めるようになり、読み流暢性が改善したとのことです。LD児童の多くが、文字と音の結びつきが弱く、頭の中の言葉と、単語の文字列が結びついていません。つまり単語としての一纏め記憶が未形成なので、単語単位での読みではなく、1文字ずつ確かめる逐次読みになりがちなのです。触るグリフで、仮名1文字、単語、短文と段階的に触読学習を行う事で、文字と音の結びつきの改善に加えて、文字から単語形態単位での記憶形成が促されたと考えます。

読みの流暢性改善だけではなくて、正確に読める文字の数も増えました。仮名の読み間違いの減少に加えて、漢字126文字では、読める漢字が7語から38語へと大幅に増えました。

書字は、今までは特殊音節を書くことが苦手でしたが、スラスラと書けるようになりました。仮名は、聴いて書く時に思い出しにくい文字もありましたが、書けるようになりました。漢字は学年相応の6年生の文字は難しいですが、低学年の漢字は書けるものが増えました。複雑な漢字も分解すると、カタカナと1年生の漢字を元にした部分パーツの組み合わせになりますので、カタカナと小学1年生の漢字の文字形態の記憶を精緻かつ強固に形成することで、大幅に改善したと推測されます。

WISK-Vの成績も大きく向上しました。知能は生涯を通して固定的なものではありません。特に読み書き能力の変化が全般性知能に及ぼす影響は大きい事がわかります。成績変化が大きい項目として、言語理解がありますが、これは「読み」の改善により語彙知識が増えた事に加えて、単語形態記憶が形成されたことで、言葉を思い浮かべる時の語彙表象の想起が促されたと推測されます。

こちらも興味深い変化です。

学習全般で底上げ的な変化があったようでした。小学校の支援だけではなく、非木津突き中学入学まで見据えた支援体制、就職を見据えた進路等相談も話し合ったそうです。

良く纏まっていると思います。
