読みの流暢性が読解を制限するメカニズム
―ディスレクシアにおける読みのアクセス過程―
はじめに
支援の現場や保護者の方から、非常によく聞かれるご相談があります。
それは、
「音読はできているように見えるのに、
読解問題になると答えられないのはなぜでしょうか?」
一見すると「文章の理解力が弱いのでは?」と思われがちですが、
実際には理解力そのものではなく、読む過程に負担がかかっていることが原因の場合が少なくありません。
「読めている」と「使える」は違う
ディスレクシアのあるお子さんの中には、
一文字一文字を追いながら、時間をかければ正しく読める子がいます。
しかしその読み方は、
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文字を音に変換することに多くのエネルギーを使っている
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読みながら内容を保持・整理する余力が残っていない
という状態になりやすいのが特徴です。
そのため、
音読は成立しているように見えても、
読解問題になると内容が頭に残っていない、ということが起こります。
読みの流暢性が低いと、何が起きるのか
読みの流暢性(スピード・正確さ・負担感)が十分でない場合、
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読むこと自体に注意が奪われる
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文全体の意味を統合する前に情報が抜け落ちる
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設問を読んだときに、本文の内容を思い出せない
といった状態になりやすくなります。
これは「理解していない」のではなく、
理解に必要な情報へスムーズにアクセスできていない状態といえます。
読解が苦手に見える本当の理由
読解問題でつまずくと、
「語彙が少ないのでは」「考える力が弱いのでは」と受け取られることがあります。
しかし検査や支援の中でよく見られるのは、
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読み上げてもらうと正しく答えられる
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口頭で説明すると理解できている
といった姿です。
これは、内容理解の力は保たれている一方で、
文字を通したアクセスに負担があることを示しています。
おわりに
読み書きは、それ自体が目的ではなく、
内容にアクセスし、本来の理解力を発揮するための道具です。
大切なのは、
「読めているかどうか」だけを見るのではなく、
その子が無理なく内容にたどり着けているかという視点です。
読み書きは道具であり、
内容にアクセスし、本来の理解力を発揮できる状態にすることが大事です。


